賭博、事故、まさかの敗退… 桃田賢斗、波乱のバドミントン人生

まさかの敗退だった。金メダル候補として臨んだが、28日の1次リーグで世界ランキング38位の韓国選手の攻勢に圧倒された。「自信を持ってプレーできなかった」。膝をついてうなだれる桃田賢斗(26)=NTT東日本=の姿に、彼は何度、試練を与えられるのだろうかと思った。

 名前の由来は米映画「スーパーマン」の主人公クラーク・ケントだが、彼の人生は映画よりもドラマチックだ。東日本大震災、賭博、交通事故、そして念願の東京オリンピックは早々に敗退と波乱に満ちている。

 「すごい車や時計を持ちたい。スーパースターになりたいんです」

 2015年末、世界トップ選手が集まるスーパーシリーズ・ファイナルで初優勝し、16年リオデジャネイロ五輪のメダル候補に名乗りを上げた。当時21歳。やんちゃな発言と軽やかな天才肌のプレーで世間の注目を集めた。

だが、16年2月に初めてじっくり話を聞く機会があったが、抱いていた印象と違った。好きな言葉を尋ねると「毎日の積み重ねが一瞬の奇跡を生む」。米大リーグで活躍したイチローさんの名言を挙げて、「才能より毎日コツコツやれるかどうかが大事」と真面目な表情で語った。桃田は自由奔放なのか、ストイックなのか。担当になったばかりの記者は、どちらが本当の姿なのか測りかねていた。

 その直後の16年4月、違法賭博行為が発覚し、リオ五輪を目前にして1年余の出場停止処分を受けた。記者会見で「周囲を裏切ってしまった」と語ったが、「あの言葉はうそだったのか」とショックだった。